2013年6月1日土曜日

HAKOBUNE 【エピソード4】 かえろう。





むこうに、小さな島が見える。緑に囲まれた、本当に小さな島だ。



港に小さなボートが何隻か止まっていて、波間に揺れている。







堤防で釣りをしている人が見える。白い壁に、少しさび付いた色の灯台。
















僕たち4人の舟は、誰が決めたわけでもなく、吸い込まれるようにして、その島に向かっていた。

















1人が言った。












「ちょっと、休むわ。降りていい?」


















残りの3人が言った。


「うん。」




「いいよ。」





「そうしようか。」


























船出から5年、


大航海を続けた4人の舟はとうとう、立ち寄った見知らぬ島の船着場で、休息することになった。















港が近づいて来たところで、







1人が言った。







「僕たちはまた、すぐ漕ぎ出そう。」










1人はうなづいた。




「そうだな、そうしよう。」


















また1人は言った。













「いや、僕はこの4人でないと、もう、乗りたくないな。」





































やがて舟は、港に着いた。





そして、舟を降りる時に僕らは決めたのだ。



















「スミノ、モリモト、コジマ、タロウ。この4人が揃わなったら、もうこの舟には乗らないでおこう。」




















そういって、



4人は舟を降りた。





















舟を降りて、それぞれが別々の方向に歩き出した。























この先はそれぞれが、山に登ったり、歌を歌ったり、仕事をしたり、子供たちに音楽を教えたり。











4人がまた好きなようにそれぞれの生活を、始めることになるだろう。




















僕たちはまだ、同じ小さな島の中にいる。きっと、会おうと思えばいつだって、会えるはずだ。













けれど、また同じ舟に乗り込むかどうかは、



























誰も知らない。





















僕達はきっとどこにも行きたくなかったし、同時にどこまでも行きたかったんだと思う。





























おわり。



















************************

『かえろう』













乗り込む舟は もう消えた。











成り代わる偉い人 もういない。













星降る夜も 明けてきた。















交わらぬ二人は もういない。












「会いたくなったら、ここおいで。」
















頭ん中の小人たち そう言ったから


















信じてここまで やってきた。



















あたたかい場所まで もう少し。

















かえろう



















かえろう




















かえろう。